はじめのいっぽ・ライカIIIc


 それは昭和40年代初めのことでした。「オーイ!」という声に振り向くと、友人のN君がにこにこしながら立っていました。 その肩には新しいカメラがぶら下がっており、よく見ると、なんと当時人気絶頂だったニコンFでした。私はそれまで父のパールIIを使っていましたが、前々から憧れていたニコンF、私も欲しい!!と思いました。しかし、若輩で薄給の身には高嶺の花でとても手の出るような代物ではありませんでした。

 
それから数年後、何とか工面して月賦で念願のニコンFを手に入れることができましたが、その日は嬉しくて嬉しくて、抱いて寝てしまったことを今でも鮮明に憶えています。

 その後、ニコンF2からFEF3……、ペンタックス、オリンパス、キャノン、マミヤ、ブロニカ、ハッセル等々と色々なカメラを入手し、楽しんできました。
 また、機材負けしてはと、プロ写真家U先生に師事して、10年間みっちりと技術を叩き込まれました。腕試しにとチャレンジした各種の写真コンテストで、トロフィー、盾を置き場に困るほど集めたことは、青春のよき思い出ですね。

 ところが、世の中の進歩とともにカメラも変わり、金属カメラからプラスチックカメラ?へ、精密機械から電気製品へとなってしまいました。操作性は格段に良くなりましたが、単に押せば写ってしまうという何とも味気ない、私にとっては全く魅力のないカメラになってしまいました。……こうしてカメラへの興味はだんだん薄れていってしまいました。

そんなある日、知人の Ogashin君が、「これライカだよ」と古びたカメラを自慢げに見せてくれました。初めて見るライカ(バルナックタイプ)で機種など全く分かりませんでしたが、完動品とのこと。どんなに古いライカでも修理が可能だと聞くと、さすがドイツ物、日本物みたいな使い捨てカメラとは訳が違うと妙に感心し、忘れかけていたカメラへの情熱が蘇って来るのを感じました。まさしく金属カメラの感触で、これこそ本物のカメラだ!そう思うと居ても立っても居られなくなりました……。何でもいいから安いものをと、早速買ったのがライカIIIでした。小遣いの範囲内で買えてしまいましたが、後から聞いた話ですと、昔、IIIを売ってそのお金で名古屋のど真中にあった店(ちなみにカメラ店)を買った人がいたそうです。ライカとはそういう神話的なカメラなのですね。しかし、遠い存在と思っていたライカは意外と身近でした。シリアルナンバーを調べてみましたら、偶然にも私と同年齢でした。これも運命か?……。これが私のライカへのはじめのいっぽでした。



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